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「認知症ほのぼの見聞録」 令和5年5月版

昔、一緒に住んでいた
祖父との会話です。

たぶん、私はまだ小学生でした。

「おじいちゃん、今日、
お勝手の火を消し忘れちゃったんだ。」

祖父は、好物の
“アサリのぬた”を作っていたことを
途中で忘れ、
お鍋を焦がしてしまったんだそう。

寂しそうな祖父に、私は、
「また、明日も作ればいいじゃん!
明日は食べられるよ!」と声を掛け、
慰めました。

それでも祖父の表情は浮かないまま、
少し考えるように黙った後、
また寂しそうに、

「もう、おじいちゃんは年だから、
お勝手に立たん方がいいな。」といいました。

私が驚いて、「なんで?」と尋ねると、
祖父もまた驚いた顔で、
「だって、危ないだろ?」と答えました。

その時の私たちは、
あまりに感情が噛み合わず、
お互いに目をまん丸くした状態のまま、
数十秒黙って向かい合っていたと思います(笑)

認知症という言葉すら知らなかった私は、
祖父の言葉に込められた、
寂しい“覚悟”のような物を理解できないまま、
ただただ、「どうして一回忘れちゃっただけで、
そんなことを言うの?」というもどかしい思いで、

「私も一緒に(火の元を)見ればいいんでしょ?
それだけでしょ?」と伝えました。

すると、祖父はますます
鳩が豆鉄砲を食ったような表情になり、
でも、次の瞬間、とても嬉しそうに笑って
「そうか」と静かに言ってくれました。

 

固い物を切るのが難しいのなら、
そこだけ誰かが代わればいい。

味付けを忘れてしまったなら、
誰かと相談すればいい。
一緒に味見をすればいい。

火の始末が不安なら、
誰かがそばにいればいい。

サポートハウスの利用者さん達が、
至極当然に家事をされている姿を見ていると、
祖父との懐かしいやりとりを思い出し、
何とも言えない
嬉しい気持ちになります(´艸`*)笑

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